インターネットのプライバシーを守るVPNですが、接続速度が遅くなる経験をした人は多いです。速度の遅さを改善するには、原因に応じた対策が必要です。
この記事では、VPNが遅くなる原因と接続速度を速くする具体的な方法を紹介します。当記事の内容を実践し、快適なネット環境にしましょう。
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VPN接続が遅い原因
VPN接続時に接続速度が遅くなる理由には、いくつかの原因があります。改善するために、原因の詳細を理解しましょう。VPNの接続速度が遅くなる主な原因は以下のとおりです。
- 物理的な距離
- アクセスの集中
- プロバイダーの制限
- VPNサーバーの選択ミス
- VPNプロトコルの選択ミス
- ハードウェアの性能の低さ
- MTUの不適切な設定
- セキュリティソフトによる制約
物理的な距離
VPN接続の速度が遅い原因は、物理的な距離です。ユーザーとVPNサーバーの位置が遠いと、遠方のサーバーと往復するため、信号伝達に時間がかかり、接続速度が低下します。遅延は距離が遠いほど著しくなります。
遅延の積み重ねによる反応時間の増加や、パケット損失のリスクが高まる複雑なネットワークルートも速度低下の原因の一つです。長距離通信の場合は、光ファイバーの屈折率による微小な遅延も累積されます。
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アクセスの集中
アクセスの集中が起こると、VPNの接続が遅くなる場合があります。原因は、VPNサーバーへの同時接続人数が多いことによって起こる回線の混雑です。インターネットの利用が増える時間帯にはアクセスが集中し、VPNの帯域幅が限られます。主に以下の場合にアクセスが集中しやすいです。
- 地域イベントの開催
- 休日・祝日
- 会社・学校での共同作業
アクセスの集中は、混雑する時期や時間帯に接続しなければ回避可能です。
プロバイダーの制限
ネットワーク上のトラフィックを管理しているプロバイダーの制限も、VPN接続時の速度に影響します。プロバイダーは、混雑回避を目的に特定の通信を制限するため、VPN接続の速度を遅くする場合があります。プロバイダーの制限がかかる原因は以下のとおりです。
- データ通信のピーク時
- 契約プランに応じた速度上限の超過
- インフラが不十分
- 国や地域による規制
接続速度の低下は主にバンド幅制限(スロットリング)などが用いられます。場合によってはインターネット通信を遮断します。プロバイダーの制限がVPN接続の速度に影響を与える場合、時間帯を変えて接続を行うなどの対策が有効です。
VPNサーバーの選択ミス
不適切なVPNサーバーを選ぶと、インターネットの速度が遅くなる可能性があります。選択するサーバーが利用者の場所から遠いと、データの伝達に時間がかかり、接続速度が低下します。帯域幅が狭いサーバーや、同時接続による負荷が高いサーバーの利用も、接続速度が低下する原因です。
セキュリティ対策が厳格なサーバーは、安全性を確保する代わりに速度を制限している場合もあります。VPNプロバイダーが提供するサーバーのパフォーマンスは一定ではないため、適切なVPNサーバーの選択が必要です。
VPNプロトコルの選択ミス
プロトコルは、セキュリティの強度や速度、互換性などが異なります。適切なものを選ばないと、速度低下やネットワークの不安定さを招く可能性があります。古いプロトコルの使用は、セキュリティリスクの増加だけでなく、速度の低下を引き起こす原因の一つです。
ビジネス利用など、速度が求められる状況では、高度な暗号化に伴う速度低下は避けたいものです。速度を安定させるには、最新の技術を取り入れたVPNプロトコルを選択する必要があります。VPNによっては選択肢が限られている場合もあるため、利用可能なプロトコルからバランスの良いものを選びましょう。
プロトコル選びはネットワーク環境や利用目的が重要です。プロトコル選びに迷った際は、VPNサービスのサポートや専門家の意見を参考にしてください。適切なプロトコルの選択により、安定した高速なVPN接続を実現できます。
ハードウェアの性能の低さ
性能が低いハードウェアでは、端末の処理能力が不十分になり、データの送受信がスムーズに行えません。処理速度が古いプロセッサや、十分な量のRAMが搭載されていない場合も、端末はデータの一時保存に時間がかかります。複数のアプリやプロセスを同時進行している場合の処理能力も低下します。
ネットワーク機器の性能も重要です。帯域幅が狭いネットワークインターフェースカードだと、速度が制限されます。ストレージの読み書き速度が遅いことや、冷却が不十分で過熱した場合もデータ処理に影響します。ハードウェアを正常に作動させるには、高速SSDの使用や適切な冷却などの対策が必要です。
MTUの不適切な設定
MTUとは、通信ネットワーク上で1度に送れるデータの最大サイズのことです。MTUの値が大きすぎると、ネットワークが処理できずにデータが分割されて送信されるため、速度が低下します。小さすぎる場合もデータ効率が悪くなり、速度低下の原因になります。
VPNを使用している場合は、暗号化によってデータサイズが増加するため、通常の接続時とは異なる設定が必要です。適切なMTU値を見つけるために、pingテストなどでネットワークの状態を確認し、最適化しましょう。適切な設定で、VPN接続のパフォーマンスは大きく改善します。
セキュリティソフトによる制約
ファイアウォールやアンチウイルスなどのセキュリティソフトは、VPNの接続速度を低下させる場合があります。セキュリティソフトが、VPNの暗号化されたトラフィックを解読しようとする際に必要となる追加のCPUリソースが原因です。
VPN接続が不正行為と誤検出した場合や、セキュリティプロトコル同士が競合した場合も速度を低下させます。セキュリティソフトはVPNの動作にさまざまな制限をかける場合があるため、問題が生じた際は設定の見直しが必要です。
VPNが遅いときに確認すべき項目
VPNの接続が遅いと感じた場合、速度改善のために確認すべき項目がいくつかあります。VPNの速度低下を解消する一般的なトラブルシューティングの方法を解説します。
端末とルーターの起動状態
インターネットを快適に使うには、端末やルーターの起動状態が重要です。VPN接続が遅いと感じたときは、状態を正常に戻す必要があります。方法は以下のとおりです。
- 端末を再起動する
- ルーターを再起動する
- 端末とルーターの接続状態を確認する
- ルーターのファームウェアを最新にする
- 端末とルーターに障害の有無を確認する
デバイスに問題がある場合、VPN接続に不具合を引き起こす可能性があります。状態を確認することでVPN接続の問題を解決でき、快適なインターネット環境を整えられます。
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VPNクライアントとアプリのバージョン
VPNクライアントとアプリのバージョンを定期的に確認しましょう。最新バージョンに更新すると、パフォーマンスの向上やバグの修正、新機能の追加などが行われます。接続速度の低下が改善される可能性があります。VPNクライアントソフトウェアが古い場合は更新を行ってください。
デバイスの互換性も重要です。互換性がなければ、正常に作動しないため、最適なバージョンをインストールする必要があります。
ネットワーク設定
ネットワーク設定を確認し、VPN接続が遅い原因を特定しましょう。問題を見つけるには、以下の項目の確認が必要です。
- IPアドレス
- DNSサーバーのアドレス
- サブネットマスクの基本情報
- デフォルトゲートウェイの基本情報
- ファイアウォールやルーターのポート
- 接続ネットワークの優先度
- VPNの設定とサーバー情報
- ネットワークの帯域の使用量
- プロキシサーバーの設定
設定が不適切だと、VPN接続の速度が遅くなるだけでなく、接続自体ができない場合があります。適切な調整により、VPN接続の品質と速度の改善が可能です。
VPN接続が遅いときに速くする方法
VPN接続の速度低下を改善する方法をご紹介します。VPN接続が遅いと感じたときは参考にしてください。
空いている時間帯の再接続
インターネットの利用が少ない時間帯を狙ってVPNに再接続すると、接続速度が改善する場合があります。ピークタイムは避け、夜間や早朝などの時間帯に接続すると速度低下を避けられます。週末や祝日は他の利用者も多くなるので、接続する時間帯を意識しましょう。
接続時間を見直すことで常に効率的なVPN利用が可能になり、ストレスのないインターネット環境を整えられます。
高速なVPNプロバイダーへの乗り換え
接続速度が遅い場合は、高速なVPNプロバイダーへの乗り換えも効果的です。VPNの速度はプロバイダーによって異なるため、選定の際はユーザーレビューや速度テストデータを参考にしましょう。性能や機能的な部分は、以下の点を確認してください。
- サーバーの数や設置地域
- 高速サーバーや無制限帯域幅の有無
- トライアル期間
- 返金保証の有無
無料期間を利用すれば、自宅や移動中など異なる環境で速度テストが行えます。実際の使用状況にマッチした最適なVPNプロバイダーを見つけられます。高速なインターネット接続を実現できるプロバイダー選びが重要です。
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VPNプロトコルの最適化
VPNプロトコルとは、接続したデバイス同士が行うデータ通信方法を定めたルールを指します。VPN接続が遅いと感じた場合は、プロトコルの選択ミスが原因の一つです。使用しているプロトコルの変更で速度が改善する可能性があります。
プロトコルはOpenVPNやIKEv2、IPsecが一般的ですが、セキュリティと速度の性能を考えて選ぶ必要があります。おすすめは、WireGuardやIKEv2です。VPNプロバイダーが推奨する設定をチェックし、VPNクライアントを常に最新の状態に保つことも重要です。
複数のプロトコルを試して、自分の環境に適したものを見つければ、速く安定したVPN接続を実現できます。
ハードウェアのアップグレード
ハードウェアの性能が低いとVPN接続の速度低下につながります。改善につながるアップグレードを検討しましょう。具体的なアップグレードの方法は以下のとおりです。
- メモリの増設
- SSDの交換
- CPUのアップグレード
- ギガビット対応のNICへの変更
- Wi-Fiルーターやモデムの変更
- 専用ハードウェアの導入
- 冷却対策
ハードウェアのアップグレードは、VPN接続の品質だけでなく、全体的なコンピューターのパフォーマンスも向上させます。ハードウェアの総合的な改善を望むユーザーにおすすめです。
MTUサイズの最適化
MTUサイズの最適化により、VPN接続の速度が向上する場合があります。VPNを利用した通信では、MTUサイズの調整が速度に大きな影響を与えます。適切なMTUサイズを見つける方法は、自動ツールと手動の二つです。pingテストを利用すれば、より最適なMTUサイズを見つけられます。
インターネットの接続速度が遅いと感じる場合は、MTUサイズを確認し、必要に応じて調整しましょう。
セキュリティソフトの設定見直し
セキュリティソフトの機能によっては、VPNトラフィックに制限やブロックをかける場合があります。改善するには、セキュリティソフトのリアルタイムスキャン機能の一時停止が必要です。ファイアウォールの設定を確認し、VPN接続に必要な通信ができるように変更しましょう。
例外リストにVPNアプリを追加すれば、セキュリティソフトによるVPNの動作制限をなくせます。設定の最適化で、VPN接続の速度が改善される可能性があります。
VPN接続に関するよくある質問
VPN接続に関するよくある質問をまとめました。VPN接続がうまくいかないときの参考にしてください。
VPN接続が全くできないときはどうすればいい?
VPN接続ができないときはいくつかの対処法を試してみましょう。効果的な方法は以下のとおりです。
- VPNクライアントの再起動や再インストール
- セキュリティソフトウェアの設定確認
- ネットワーク設定の見直し
- VPN接続に必要なポートの開放状況の確認
- 別のVPNサーバーやプロトコルを試行
- インターネット接続の確認
- デバイスOSの最新状態を確認
上記の対処法は、VPN接続問題の解決に有効です。改善しない場合は、専門業者へ相談する必要があります。
VPN接続中のデータ使用量の確認方法は?
データ使用量を確認する方法はいくつかあります。
スマートフォンを使用している場合は、設定メニューから確認が可能です。パソコンを使用している場合は、タスクマネージャーやアクティビティモニターで使用状況を確認できます。VPNクライアントアプリに備わっているデータ使用量の統計機能も利用可能です。
詳細な使用量を確認したい場合は、サードパーティ製のデータ監視ツールがおすすめです。モバイルデータを利用している場合は、通信事業者のアカウントページで確認しましょう。VPNを利用する際は、接続中のデータ使用量を把握しておくべきです。高額なデータ使用料の回避や、接続速度が遅い原因の特定に役立ちます。
VPN接続の速度が向上しないときはどうする?
VPN接続の速度が向上しない場合は、いくつかの対策を行いましょう。有効な方法は以下のとおりです。
- 端末やルーターを再起動
- VPNや関連アプリのバージョンを更新
- VPNサーバーの場所を変更
- VPNプロトコルを変更
- 接続時間の見直し
- ハードウェアのスペック確認
- セキュリティソフトウェアの設定変更
適切な対策を講じれば、VPNを正常に利用できます。対策を試しても改善が見られない場合は、VPNサービスプロバイダー自体の変更が必要です。
まとめ
VPN接続が遅くなる原因は、ユーザーのインターネット利用環境やデバイスの設定、VPNのプロトコルなどさまざまです。理解することで問題解決に役立ちます。VPNが遅いときには、デバイスの起動状況やVPNクライアントのバージョン、ネットワーク設定を見直しましょう。適切な対策により、快適にVPNを利用できます。